園医から

※子どもたちの健やかな成長を願って!
2025年1月・2月合併号
赤坂 徹

幼稚園の3学期は1年間のまとめ、あるいは卒園の時期でもあります。
色々な経験を積み重ねることで目覚ましい発達を遂げる時でもあります。
身体の働きは1日の中でも変化します。年間を通じてのゆっくりとした
大きな変化を認めることがあります。そのようなお子さんの様子を見て
嬉しくなりますが、意図的に早めたり、遅らせることはできません。
昼夜を問わず無意識のうちに働いている自律神経系とそれに関連する身体
の仕組みについて考えてみましょう。

 
1.自律神経の役割

心臓、肺臓、胃腸などは自動的に自律神経(交感神経、副交感神経)のバランスで動いています。物を取りたいと思って手を動かすような神経の動きとは異なります。春に思春期の子どもに多く認められる自律神経失調症、起立性調節障害は幼児には少ないのですが、暖かくなっていく春、新学期の忙しい時期に発症することが多いようです。
 
1)日内変動について
身体の動きの日内変動は体内時計または生物時計とも呼ばれています。地球の自転周期に合わせて24時間周期として概日リズム(サーカディアンリズム)を作っています。24時間よりも若干長くなりますが、地球の自転と同調しています。体内時計は血圧、体温、消化酵素や内分泌ホルモンの分泌周期、睡眠覚醒サイクル、免疫反応などをコントロールしています。

2)自律神経失調症とその対応
起立性調節障害には立ちくらみ、めまい、悪心、頭痛、意識障害、朝起きられないなどの一連の症状が認められます。単なる血圧維持機構の機能不全だけではなく、自律神経系や内分泌系の複雑な機能異常が考えられ、心身医学的視点が必要となります。安静横臥位から立ち上がった時の収縮期血圧の低下、脈圧(収縮期と拡張期の血圧差)の狭小、脈拍の増加が診断に役立ちます。規則正しい生活(早寝・早起き・朝ご飯)が基本ですが、効果が不十分な場合には薬物治療を併用します。かかりつけの小児科医にご相談下さい。

 
2.生まれてから今までの変動について

子どもは親子関係の中でエリクソンが述べているようにそれぞれの年齢に与えられた発達課題(life task)を乗り越えながら成長していきます。生まれたての赤ちゃんが抱き上げられ、授乳し、目を合わせることで愛情が生まれ、1歳までに基本的信頼感ができます。睡眠と覚醒のリズム、食事と排泄のリズムは共に心身の発達や成長に重要です。2歳を過ぎると母子共生関係から、子どもの反抗(自我の芽生え)、反発が見られるようになります。子どもに自己選択、自己決定をさせ、達成感を与えることで良好な親子関係が育って2~4歳の発達課題となります。子どもは模倣学習ができることで集団生活の中で育っていきます。友達との遊びの中でルールを理解したり、他人の気持がわかるようになります。このような段階を踏んで成長していきます。テレビやビデオ、早期教育で代用できるものではありません。慌てず見守っていきましょう。

 
3.新学期への準備について

卒園、入園(入学)、進級の時期で、新学期を迎えるお子さんもご家族も楽しみに待たれておられると思います。就学時健康診断などの結果をもとに望ましい就学について相談があります。特に知的障害や自閉症・情緒障害がない場合でも、親子共に新しい環境に不安を感じる事もあるでしょう。通常の適応能力があれば新しい環境に慣れていくことは間違いありません。幼稚園と小学校の違いは何でしょうか。それまで比較的自由に遊んでいたお子さんは授業の時間、教室も決まっていて、皆と一緒に勉強することになります。新しい環境に慣れるために次のようなことを提案したいと思います。
 
1)規則正しい生活
起床時刻を洗面、朝食、排泄、登校時間に合わせて設定し、睡眠時間を十分にとれるように就寝時刻を決めましょう。きちんと食事をとることで排泄(排尿、排便)のリズムもできます。食物アレルギーがあれば、給食での対応や制限の有無が記入された指導表を提出すします。好き嫌いがなくなるような準備できると良いですね。

2)家庭での役割
お子さんにあった簡単な家事を担当させ、よくできたとほめましょう。家族の中で自分が役に立っていることが判れば自信につながります。

3)満足することを知る
欲しいものがすぐに手に入ると我慢(がまん)ができなくなります。お子さんにふさわしい物であれば、お誕生日のように期限を約束して購入するようにします。お子さんを取り巻く両親や祖父母と共通した対応が望まれます。

4)入学までに予防接種を受けたかどうかを母子手帳で確認して、受けておきましょう。

5)虫歯の治療は完了していますか。軽いうちに歯科医で治して、歯磨きも良い習慣です。近視・遠視などの視力障害があれば眼科医を受診しておきましょう。

 
★今、流行っている?(お母さんに伝えたい子どもの病気ホームケアガイド第4版、2013)
 
1)溶連菌感染症(ようれんきんかんせんしょう)(溶血性連鎖球菌感染症、猩紅熱(しょうこうねつ))
溶連菌という細菌がのどに感染して、のどの痛み、熱、体や手足の発疹が出て、舌はイチゴのようになります。うつる病気ですが、予防接種はありません。検査で溶連菌がはっきりしたら、ペニシリン系抗菌薬を飲みます。1日から2日で熱がさがり、のどの痛みも消えます。途中で薬をやめると再発し、リウマチ熱を起こすことがあります。指示通り最後まで飲むことが大切です。

2)みずぼうそう(水痘(すいとう))
水を持った赤い発疹が口の中から陰部、頭皮まで全身に出ます。発疹は2~3日でピークになり、その後に乾いて黒いかさぶたになります。平均して1週間ぐらいでよくなります。うつる病気で、予防接種があります。かゆみ止めの塗り薬と飲み薬、化膿した時は抗菌薬、症状によって抗ウイルス薬が処方されることもあります。