園医から
※子どもたちの健やかな成長を願って!
2024年10月・11月合併号
赤坂 徹
Ⅰ.切れ目のない子どもの健康支援
―1か月児・5歳児健康診査支援事業が加わりました―
これまで母子保健法に基づいて1歳6か月及び3歳児を対象とした健康診査が市町村において義務づけられ、3~6か月頃及び9~11か月頃の健診も実施されてきました。新たに1か月児及び5歳児の健康診査支援事業が加えられ、国が自治体の事業を支援し、切れ目のない健康診査を目指すことになります。
1.健康の総合評価につながる母子手帳の活用について
誕生前のお母さんの健康状態が記載されており、お子さんが誕生した瞬間から小学校に入学するまでの健康状態を記録することができます。手帳は制度の変更に合わせて各県で更新されています。これらのすばらしさは国際的にも認められ、発達途上国ではその国の言語に翻訳されて活用されています。
1)発育と発達の評価
身長や体重を発育曲線に記入すると、健康に育っているかどうかが確認できます。発育曲線の上と下の線の間に身長も体重もバランスよく増加していれば健康です。かなり低身長であれば成長ホルモンの障害も考えられ、精密検査が必要です。身長の割に体重が重ければ肥満であり、体重の割に身長が高ければやせになります。
発達の詳細な評価は難しいのですが、年齢相当に色々なことが出来ていれば、問題はありません。出来ない項目が多い場合は小児科医にご相談下さい。
2)病気と予防接種の記録
母子手帳にこれまでに罹った病気(病名)と治療内容等、受けた予防接種を記録します。お子さんが大学や専門学校に入学したり、就職して家を出る時、その母子手帳を持たせましょう。ご両親の子育ての記録は愛情の記録でもあります。
2.新しいチェックポント
1)1か月児健診
新生児期の健康状態や発育を早期に確認し、問題があれば早期に対応します。体重増加や黄疸、授乳の状況などを確認し、母親の不安を解消して、母子共に健やかなスタートを支援します。
2)5歳児健診
就学前の発達状態を総合的に評価し、発育の遅れや能力の偏りを早期に発見して適切な支援につなげます。
Ⅱ.ワクチンで予防できる病気(Vaccine Preventable Disease:VPD)
1.ワクチンの意味
ワクチンはその作用、副反応が科学的に検討され、国が接種を認めたものです。弱い立場の子どもたちの健康を守ることが保護者の責任です。集団生活の中で多くの人がワクチンを受けていると、その病気を防ぐことができます。
ワクチンを受けてない成人男子が風疹に罹った場合、免疫(風疹への抵抗力)がない家族にうつすことがあります。医療・看護系の大学等に入学する際に、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎の抗体価を測定し、低い場合にはワクチンを接種するようになっています。
2.ワクチンの種類
ワクチンには予防接種法で定められている「定期接種」とそれ以外の「任意接種」があります。国の通知で変更の可能性がありますので、予約時にお確かめください(※)。次回までの間隔や別のワクチンとの間隔はお問い合わせ下さい。正しい知識を持って決められた年齢に、決められた回数を受けましょう。
提起接種ワクチン:五種混合(※)(ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ、インフルエンザ菌b型:Hib)、BCG、麻疹・風疹(MR)、日本脳炎、小児用肺炎球菌、ヒトパピローマウイルス(HPV:子宮頸癌及びHPV関連疾患)、水痘、B型肝炎
任意接種ワクチン:ロタウイルス、流行性耳下腺炎、インフルエンザ
3.インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染症について
厚生労働省感染症ガイドライン及び学校安全法では、感染症を発症した場合の療養期間(出席停止期間)が定められています。冬に向けて流行するインフルエンザと未だに終息が見られない新型コロナウイルス感染症について説明します。
1)インフルエンザ
インフルエンザが疑われる場合、医療機関を受診して、正確な診断、隔離を含む生活指導、適切な治療を受けましょう。集団生活における隔離期間は以下の通りです。
①出席停止期間:発病した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで、ただし、発熱した日(発症した日)及び解熱した日は含みません。
②学校などの臨時休業の目安(あくまでも参考です)
学級閉鎖(1学年1学級の場合は学年閉鎖とする):学級内に3~4人(10%)に発生
学年閉鎖:同一学年の複数の学級において学級閉鎖となる場合
休校:複数の学年において学年閉鎖となる場合
2)新型コロナウイルス感染症
2023年5月に2類感染症から5類感染症になり、社会活動の規制が緩和されています。このウイルスが消滅、弱毒化されたわけでもなく、現時点においても決定的な効果はワクチンや治療薬に認められていません。医療機関を受診して正確な診断と隔離を含む生活指導、対症療法を受けましょう。
①出席停止期間:発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで
②学校などの臨時休業の目安
学級閉鎖:5日程度(土日祝日を含む)を目安に、感染の把握状況、児童生徒等への影響を踏まえて判断します。
学年閉鎖:複数の学級を閉鎖し、かつ、楽年内で観戦が広がっている可能性が高い場合
休校:複数の学年を閉鎖し、かつ、学校内で感染が広がっている可能性が高い場合